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2008年10月16日 (木)

ピタゴラスイッチ、弓曳童子、ルーブ・ゴールドバーグ

ピタゴラスイッチ」、ご存知の方も多いだろう。ビー玉がコロコロ転がっていろんな仕掛けが動くアレ(=ピタゴラ装置)のこと。私は、8時過ぎのピタゴラスイッチミニを見て、創造力のスイッチをオンして出かけることが多い。

NHK教育テレビの番組を子供と一緒に見る機会が増えた。テレビを見せると言葉の発達が遅れる、という説もあるけれど、子供の教育を後押しするいいコンテンツだと思う。それに、大人も楽しい。「クインテット」の人形たちの精巧な楽器演奏振りは、ちょっと驚き。でも、「ピタゴラスイッチ」の創造性には、もっとグッとくる。ついつい、オープニングとエンディングのピタゴラ装置をかじりついて見てしまう。見たことあるものでも、やはり楽しい。

なぜ、そんなに魅力的なのか?

ピタゴラ装置は、事前に仕組まれたスタートからゴールまでの一連の動作を精密に実行する自動機械(オートマタ:automata)だ。ドミノ倒しやからくり(絡繰)人形と同じ種類のもの。論理的には、コンピュータのプログラムを機械的に実行していることになる。

何と言っても、決定論的な精密さが素晴らしい。失敗しそうな機械的な素材で実装しながら、ゴールまで精密に動きを伝達する。弓曳童子に通じる驚きだ。弓曳童子は、茶運人形と並ぶ江戸時代の代表的なからくり。学研の「大人の科学」で復刻された弓曳童子は、簡単に手に入る。矢の連射だけですごいのに、1本だけわざと的を外すよう細工してあって、当たりと外れの表情の違いを味わえるんだから、もっとすごい。ピタゴラ装置の撮影では、失敗を繰り返しながら細部を調整するんだろうが、結果の映像には驚くばかりの精密さがある。

一言で言えば、技術的な創造性にグッとくる感じだ。

で、弓曳童子と比べると、すぐ、別の愉快な面に気づく。当時の技術水準では弓曳童子の難易度は相当に高いものだが、目的に適った効果的で最適に近いデザインが選ばれていると言えよう。しかし、ピタゴラ装置では、「ピタゴラスイッチ」の文字を表示する単純な目的のために、非合理的な複雑でムダな過程を経ている。見る側は、このムダを楽しんでいる。役に立たないことを突き詰めたすがすがしさすら感じる。

また、日常の品物を本来の使い方とは異なる使い方で組み込んでいる点も楽しい。レコードプレーヤ、目覚まし時計、けん玉といった素材はとても意外だ。本来とは違うという意味で、デフォルメの魅力と呼べるだろう。それに、弓曳童子のぜんまい動力とは異なり、動きの伝達とかエネルギーの変換のやり方も多彩でわくわくする。絵画だったら、フォルムという対象そのものではなく、色彩や光といったコンテキストの豊かさに相当する。

今度は、芸術的な創造性にグッときた感じだ。

Wikipediaなどのように、アメリカの漫画家Reuben Garret Lucius Goldberg (1883-1970)の描くルーブ・ゴールドバーグ装置の一例だとの解説もある。Goldbergの漫画には、単純な目的のための複雑な機会の発明の図が出てくる。自律サイクルや永久機関に絡めて、熱力学でエントロピーとかエネルギー保存とかを説明する際に引用されることがある。

どうも、ルーブ・ゴールドバーグ装置と捉える見解には賛同できない。確かに、芸術的な創造性の面では同じジャンルだと思う。しかし、機械的な実装についての技術的な創造性の高さは、ピタゴラ装置に特有のもので、弓曳童子からの日本の伝統だろう。

ピタゴラ装置の魅力は、技術的な創造性と芸術的な創造性がミックスしたところにある。

テクノロジカル・アート
アーティスティック・エンジニアリング

ピタゴラ装置にとどまらず、これからもっと魅力的なデザインが生まれることだろう。

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コメント

I visited this sight for the first time and found it much informative and knowledgeable but I would like to add that currently we are living in the era of IT but unfortunately more than half of world population is illiterate. Out of those a few are computer and internet familiar so the target market for internet marketing is niche. Therefore the developed nations should promote IT as well as computer literacy in these developing areas so the target market can be increased in future.


BY James
mto: mcsa 2003

投稿: james | 2010年2月 3日 (水) 20時09分

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